つれづれ通信 第53号 「トース土とまちづくり」
2025年11月21日
滋賀県長浜市は、羽柴秀吉によって開かれた城下町。
今回のトース技術研究組合の会合は、「まちづくり」の視点から、この古き良き町並みが残る地で開催されました。
集合場所は、日本三大山車祭のひとつ「長浜曳山祭」で使われる山車が展示されている曳山博物館前。
そこからまちづくりアドバイザーの竹村さんの案内で、市内中心部を流れる幅3メートルほどの米川沿いを中心に、長浜の歴史や成り立ちについてご講義をいただきながら巡りました。
かつては市内の主流河川であった米川ですが、今もまちなかを流れる川とは思えないほどの清流で、かわいらしい鮎たちが群れをなして泳いでいます。
両岸には低い石積みと古民家が続き、水深は20センチほど。子どもだけでなく大人も川に入って遊んでいたそうです。
しかし現在は、河川を管轄する滋賀県から「川を歩くには河川使用許可が必要」との通達があり、事実上そうした活動はできなくなってしまいました。理由は、米川が少しの雨でも急速に増水し、危険であるためです。
もともとこの川は古くから氾濫を繰り返しており、そのために川沿いの古民家の多くが幾度も水没の被害を受けてきました。
ただし、古民家が河川沿いに密集しているため、堤防を高くするなどの対策は容易ではありません。
そこで竹村さんは、その解決策として、市内の多くの駐車場をトース土工法による貯水型に整備し、急激に雨水が川へ流れ込まないようにする計画を立てています。
これはまさに「流域治水」の考え方そのものです。
すでに流量計算も終えており、市内の駐車場すべてをトース土工法で施工した場合、豪雨時の米川の水位は現在より約20センチ下がることが確認されたとのこと。
また、長浜市内のある工場でも、駐車場をトース土で整備する計画が具体的に進みつつあります。
誰もが気兼ねなく川に入り、そこから長浜の歴史や文化に触れられる――。
そんなまちづくりにトース土が貢献できるとしたら、これほど素敵なことはありません。
生命や財産を守るだけでなく、トース土がまちの未来を支える新たな可能性を秘めていることを実感した、長浜での研修会でした。

