つれづれ通信 第21号 「グラス職人を想う」

2025年05月02日


おはようございます。
いつもお仕事をしていただき、ありがとうございます。

新宿南口から徒歩2分、甲州街道を少し代々木寄りに入ったところに、「Ice Bar」 はあります。
出張の際、特急が出発する前の時間を使って、ウイスキーを一杯。そんな過ごし方が似合う店です。

照明は控えめで、昔ながらのバーの雰囲気。
カウンターは10席ほど、テーブルもありますが、そこに座る人をほとんど見たことがありません。
常連さんが多く、たとえ店が空いていても5人以上はきれいに断ってしまう。
マスターは60歳過ぎ、ほんの少しヒゲをたくわえ、寡黙だけれど絶妙な距離感で接してくれる人です。

その店が、この3月で閉店します。
理由は入居しているビルが建て替えになるため。
マスターはこれを機に、グラス職人になる そうです。
これまでさまざまなウイスキーグラスを試してきたけれど、「これだ」と思うものには出会えなかった。ならば自分で作るしかない。そう思ったそうです。

毎日、同じ風景、繰り返えされる日々。でも、本当は同じ日なんて一日もない。川の水面のように、留まることなく少しずつ世の中は変わり続けています。

今日あるものが明日あるとは限らない。
その夜一時間ほど滞在した後、私はひとり席を立ちました。
帰りの電車に乗りながら、若い職人に混じって真っ赤な顔をしながらガラスを吹くマスターの姿を、私はどうしても浮かべることができませんでした。

今週も、どうぞよろしくお願いします。