つれづれ通信 第51号 「段差擦り付けボランティア」

2025年11月14日


山梨県アスファルト合材協会の定例事業である「段差擦り付けボランティア」が、今年は山梨大学工学部内で実施されました。

この活動は、南アルプス市の障がい者団体「ピーチ・アンド・グレープ」代表を務められていた芦沢茂夫さんとの出会いから始まり、早12年になります。きっかけは、当社のストリートプリントが山日新聞に取り上げられた記事を芦沢さんがご覧になり、「車いすでその上を走らせてみたい」と申し出てくださったことでした。
当時のインターロッキング舗装はがたつきが多く、車いす利用者の方が振動により床ずれを起こすことも少なくなかったそうです。ストリートプリントも同様の懸念があるのではと検証を希望されました。

試走当日、芦沢さんや障がい者団体の皆さんに加え、バリアフリー研究をされていた山梨大学工学部の岡村教授とゼミ生、さらに山日新聞の記者まで、多くの方々が立ち会われました。岡村先生が用意された車いすにはセンサーが取り付けられ、走行時の振動を計測。厳しい表情で試される芦沢さんに、私たちも内心はひやひやでしたが、結果は「とても走りやすい!」との高評価。最後には「山梨県内のインターロッキングはすべてこの工法にすればいい」とまで言ってくださいました。

実際、私自身も車いすに乗って試しましたが、インターロッキングの振動は想像以上で、またほんのわずかな段差でも乗り越えるのは容易ではありません。そこで芦沢さんから「歩道と車道の段差が激しい箇所を、応急的にアスファルト合材で擦り付けて解消してはどうか」とご提案いただき、この事業が始まったのです。

しかし、芦沢さんは2020年、コロナ禍の中で突然この世を去られました。
私たち合材協会はその遺志を引き継ぎ、現在は岡村先生が代表を務める「山梨ユニバーサルデザイン研究会」と共に、誰もが等しく暮らせる社会を目指して今年も段差擦り付けを行いました。

多様性の尊重が声高に言われながらも、どこか「自分さえよければ」という風潮が広がっている気がします。だからこそ、私たちは改めて「一人ひとりがかけがえのない存在である」ことを心に刻み、誰もが輝ける社会をつくっていくことが使命だと、思いを新たにするきっかけとしたいと思います。